安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件は、日本社会に衝撃を与えた。社会学者の宮台真司さん(63)は、1995年に明るみに出たオウム真理教の一連の事件など、宗教と社会の問題を長年論じてきた。宮台さんは、山上徹也容疑者(41)が凶行に至った社会的土壌に目を向け、「寄る辺なき個人をいかに社会に包摂するか」を考えていくことが大切だと指摘する。
――なぜ事件が起きたのか。
これまでの報道によると、容疑者が安倍氏を狙った動機については、本人の供述から政治的な主張にもとづくテロではなく「個人的な恨み」との見方が強まっている。
実は、大正・昭和初期の日本で続発した政治家らの要人暗殺にも、不遇感を抱いた個人が引き起こした事件が少なくなかった。背景には都市化や経済格差などがあり、事件を起こした当事者の多くに個人的不満と統治権力に頼らない自力救済の意識はあれど、世直しのために統治権力に政策変更を迫るテロを実行するという意識は薄かった。
――容疑者が犯行に至る動機を抱くような社会的背景があるということか。
宗教法人「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)に入信した容疑者の母親が破産した2002年から凶行に至るまでの20年間は、多くの若者が就職氷河期の負の影響を受け、労働・雇用市場で非正規雇用が拡大し続けた時期に重なる。
容疑者は、資格取得などに努…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル